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人気コラボ企画の中止に思うこと——ドラッカーとビジョナリー・カンパニーに学ぶ、人と組織を守る真のコンプライアンス

目次

働く「人」と「組織」を守る真のコンプライアンスとは

連日ニュースで話題となっている、大手外食チェーンにおける人気キャラクターコラボ企画の中止劇。従業員による景品の不適切な取り扱いがきっかけと報じられ、SNSなどでは転売ヤ-だけでなく、従業員側のモラルや当事者を責める声が多く聞かれます。

まだ現在のような個人間取引サービスが一般的ではなかった時代から、35年にわたり店舗運営、企業内研修、そして人事の業務に携わってきた私としては、対岸の火事として看過することができません。

時代の変化とともに「不正の形」は変化していますが、長年現場や組織を見続けてきた者として感じるのは、「現場でモラルの低下や問題が起きる背景には、必ず組織としての構造的な課題が存在する」ということです。

単なる「個人のモラルの問題」として片付けるのではなく、なぜそれが起きてしまうのか。組織のガバナンスとコンプライアンスの観点から考えてみたいと思います。

1. 現場のモラル低下を引き起こす「構造的な背景」

問題が頻発してしまう現場の背景を紐解くと、多くの場合、単なる個人の問題ではなく以下のような課題が重なっていることが見えてきます。

慢性的な人手不足(業務のゆとりがなくなり、確認作業や相互牽制が形骸化する)

職場環境・人間関係の不全(「この店舗やチームに貢献したい」という愛着や誇りが薄れる)

トレーニング(教育)の不足(ルールや仕組みの「本来の目的」が共有されていない)

これらは一見、現場リーダーの管理能力の問題に見えるかもしれません。しかし本質は、現場のトップ自身が「一人の経営者としての想い」を持ち、どのような店舗を作りたいかというビジョンを描き、伝え分けられているかどうかにかかっているのではないでしょうか?

2. ドラッカーの「3人の石切り職人」——あなたの現場は「何」を建てているか?

経営学者ピーター・ドラッカーの名著には、有名な「3人の石切り職人」のお話に出てきます。

何をしているのかと問われた3人の職人。

1人目:「これで生活の糧を得ている」(ただの作業・給料のため)

2人目:「最高の石切り技術を発揮している」(自分のスキル向上)

3人目:「大聖堂を建てている」(目的や価値への貢献)

今回の件に当てはめるなら、現場のスタッフは目の前の特典や景品を「単なる配布物(1人目の作業)」として扱っていたのか、それとも「お客様や子どもたちの笑顔と感動をつくる大切な存在(3人目の大聖堂)」として扱っていたのか、という意識の違いです。

「これをやってはいけない」と禁止事項を丸暗記させるルール縛りだけでは、人の根本的な意識は変わりません。これは社員とか短時間のスタッフとかは関係なく、「自分たちは大聖堂を建てているんだ(お客様の笑顔を作っているんだ)」という当事者意識(エンパワーメント)と誇りを持たせられるかどうか。それこそが、リーダーや組織が果たすべき「教育」の役割です。

3. 100年続く会社(ビジョナリー・カンパニー)が大切にする「基本理念」

ジム・コリンズの代表著書『ビジョナリー・カンパニー』では、長年にわたって繁栄し続ける企業(100年企業)の特徴として、「時代が変わっても決して揺るがない基本理念(コア・バリュー)を持ち、それを組織の隅々まで浸透させていること」が挙げられています。

どれほど時代が進化し、売上や効率を求める仕組みが導入されても、現場で働く「人」に基本理念や企業倫理が根付いていなければ、組織は内側から脆く崩れてしまいます。

大きな話題を呼ぶイベントや目先の成果だけに目が向き、それを支える現場の教育やガバナンス(基本理念の浸透)を軽視してしまえば、長く愛される強い組織を作ることはできません。

4. コンプライアンスは、働く「人」を守るためのお守り

「コンプライアンス(法令順守・企業倫理)」と聞くと、会社が損をしないための「監視の目」のように捉えられがちです。しかし、本来のコンプライアンスとは「そこで働く従業員が一線を越えて人生を狂わせないための防波堤(お守り)」なのです。

適切な牽制やガバナンス、そしてリーダーの「想い」が通った教育がない現場は、働く人を魔が差すような「誘惑」に晒し続けることになります。結果として、軽い気持ちで誤った選択をしたスタッフの未来や人生を壊してしまうことにもなりかねません。

健全な境界線を示し、基本理念に基づいた人間関係の質を高めることは、組織やマネジメント層の「真の思いやり」なのです。

🪢結び:あなたの現場のコンプライアンスは、人を活かせていますか?

「人手不足だから仕方ない」「最近の若者は…」と諦めたり、問題が起きたからと監視やルールばかりを強めたりしても、現場の心は離れ、真の解決には至りません。

人は環境と教育で育ちます。
リーダーが「想い」を持ち、働く一人ひとりを大切にしながら「大聖堂を建てる誇り」を共有していくこと。

企業を守り、そこで働く大切な仲間たちの可能性と未来を守るために、改めて「人を育てるガバナンスのあり方」を見つめ直していきたいものです。

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